不妊治療のこと


ここから先は、興味のある方のみお読みください。


導入

コロナのせいか、コロナのせいか(2回言った)、ニュースで取り上げられてもすぐに消えていった不妊治療の保険適用化案。結局、助成金の夫婦年収の上限が撤廃・助成額が少し拡充されただけでしたね。これによって人工授精から体外受精にシフトした人もいるかもしれないけど、「全然前進してないじゃん…」と思ったのが個人的な感想です。

せっかくライターの仕事しているんだから、私なりに感じたことを書きたい。そう思って、今このブログを書いています。城と全然関係ないですが、発信する場がここしかないのでお許しください。

それから……人の言葉は、意図せず誰かを傷つける力があります。誰も傷つけない言葉はない。発信するたびに誰かしらを傷つけているかもしれない。最近はそう思っています。不妊治療がうまくいかなかった時期は、メンタルがズタボロになり誰かの幸せを受け入れる余裕がありませんでした。大切な友だちの妊娠報告ですら、嬉しい反面傷つくことがありました。赤ちゃんの姿、妊婦さんを街中で見かけると涙を流して動けなることがありました。病院帰り、公園で一人泣いたこともありました。

今から話す内容は不妊症の私が妊娠にいたるまでの話です。

不妊治療中の方が読んで下さっているかもしれません。もし、辛いと感じるかもしれないと思ったら、もう読むのは止めてください。自分の心を守ってくださいね。

ーーーこれは3年に及んだ不妊治療の記録です。


私は不妊治療中であることを仕事先の人にもプライベートでも公にしていました。そのためか、「実は私も…」「うちの子も」「友だちも」という人が周りに多くいてスゴく心強かったです。一人の戦いだけど、けして一人じゃなかった! これから述べる話は個人の一例だけど、たぶん普通によくある話。現代の不妊治療経験者は夫婦5.6組に1組。 体外受精で生まれる子どもは18人に1人”らしいので、ごくごくある話であることを知って欲しいなと思います。

仕事より治療優先になる

私は27歳で結婚しました。病院に通い始めたのは29歳。その時は、治療したらすぐに妊娠できると簡単に考えていました。だから仕事をセーブしてすぐに育児にシフトできるように、治療最優先。病院に通うペースは多い時で週に3回。2週間おきというのもあったけど、カラダのサイクルに沿って治療も進めなければならないので仕方ないですよね。

通っていた病院は夜間診療なし。よって17時が最終診察受付時間。私は在宅仕事だから融通はきくけど、「通いで仕事してる人絶対無理じゃん」と、そう感じました。それでも仕事しながら通っている人は午前休/午後休や、お昼の時間を利用して来てたのかな。会社側・職場の人がそうとう理解してくれてないと、不妊治療は仕事と両立できないな〜と思います。長期間に及ぶ場合もありますしね。

医者に言われた言葉

医者「半年妊活してだめだったら不妊です」
自分が不妊症だと認めざるおえない瞬間でした。まだ、心のどこかで認めたくなかった気持ちがありました…(><)

とりあえず最初は検査。検査。検査。原因はわからなかったけど、検査はとにかく痛かった。子宮卵管造影検査は痛すぎて吐きました。家に帰ってもお腹が痛くて痛くて、玄関で泣きながらうずくまってしまい。その時たまたま家にいた夫が「大丈夫か?」って寄ってきたけど、「なんかあったら電話して」って遊びにでかけた時のことを今でもはっきりと覚えています。私はきっと死ぬまでこの夫の行動を覚えています(笑)

まずは人工受精を3回トライ→玉砕

すぐに体外受精に移りました。この病院の説明では、人工授精は成功率5%くらいだけど、体外受精では30%ほどにあがると。しかも当時の私はまだ30歳。結構確率が高いはず。3回目の体外受精では単純計算で80〜90%の成功率になる。しかし、5回目以降は0ではないけど、確率はガクッと下がるらしい。東京都の助成金も6回目までしか給付されないことから、このあたりがリミットなんだなと勝手に感じてしまいました。医者に言われた言葉で、自ら線を引いたのです。

怖くて痛い治療の日々

この病院で治療をはじめてからもう半年近い月日が経っていたと思います。はじめての採卵手術では、局所麻酔の注射を子宮に打ちました。痛くて顔をしかめました。まだコロナ前だったこともあり、看護師さんが私の手を握り「ごめんね、痛いよね、ごめんね、もう終わるからね」って何度も何度も励ましてくれて……その優しさに泣きました。将来は看護師になろうかなと思っちゃうくらい救われました。

夫はたまに付き添ってくれたけど結局通うのは一人。治療も一人、泣くのも一人。精子の“ふりかけ”では、受精する卵も少なくて、受精卵の凍結までいたるのは2、3個くらいだったかな。なので採卵手術は結構やりました。

胚盤胞を解凍してにカラダに戻します。これも卵管が狭くて、麻酔もないから痛かった…。とにかく不妊治療はカラダも心も痛くて苦しんだ時間でした。

来てしまった5回目のリミット

妊娠したか結果がわかる検査当日。採血して、診察室に呼ばれます。
医者「ダメでした」
私はこれを5回繰り返しました。

時には、内診室にいる時に隣の診察室の声が漏れてきて「おめでとうございます」と医者が話し、喜ぶ患者さんの声が聞こえました。これはだいぶ心のダメージがありましたね。どうして私のところにはきてくれないのかな〜と、何度も何度も自分を責めました。共感される不妊治療中の方も多いんじゃないかなと思います。

4回目あたりで医者から「免疫が強すぎる」「着床不全かもしれない」と言われ、免疫を下げる投薬がはじまりました。
ちょうど、この頃にコロナが日本でも流行り始め……なんてタイミングが悪いんだろうかとコロナを恨みました(笑)子宮内膜スクラッチ(子宮を傷つけ着床しやすくする)もしたけれど全然だめで。この辺りからコロナ感染者が国内でもポツポツ出始め、人に会えなくなり…出かけにくくなり…生き甲斐の旅にもいけなくなり…。本当にメンタルはズタボロでした。

そして5回目の結果発表では医者にこうも言われました。
「もう、私たちのところでできることはないです」

この病院に通いはじめて2年ほど。ここで一旦、治療を休もうと思いました。

注射と薬

あ、そうでした。私の場合メンタルを最も崩壊させた原因は、薬と注射でした。
採卵前や胚移植前後で薬の内容は異なるのですが…写真で見るとこんな感じです。

上の裸の薬はビタミンDと葉酸のサプリ。チラーヂンは不妊治療の過程で見つかった持病の甲状腺。ジュリナ錠はホルモン剤。ルトラールは排卵後に飲む薬で胚の着床を促す。こちらは胚移植のタイミングでのラインナップ(1日分)
自己注射。2日に1回お腹に射す。1ターンの採卵で計4,5回の注射をこなした。

 

私の通っていた1つ目のの病院は、ペンタイプの高いホルモン注射ではなく、こっちの生々しいタイプのみ。自分でお腹に射しながら、「なんでこんな想いをしなきゃいけないの」って気持ちで泣いてしまうことも。私は在宅だから融通きいたけど、決まった時間に【薬を飲む・注射をする】指示があったので、バリバリ外で働くキャリアウーマンはできないだろうな〜と思いました。

救ってくれた推しの存在

ちょっとだけ話がズレます。ごめんなさい。

人生の棒グラフを作るならば、自分史上最低値を爆走し続けている2年間。しかも急降下中。そんな時に、自分史上最高値へ一気にのし上がる出来事がおこります。18年追いかけ続けてきた推しの番組に呼ばれるのです。目の前2m先にいるホンモノの推し。わわわ、私は夢でも見てる???
毎日落ち込んでいた感情から、「生きててよかった」「お母さん生んでくれてありがとう」とか言っちゃう、The キラキラ前向きお花畑人間に生まれ変わりました(笑)会える当日まではダイエット頑張って、気持ちに余裕ができてきて!!!

あの時、間違いなく彼に救われました。願い続けたら推しに会えた!
願い続けたら……
そして、再び治療を再開する勇気をもらったのです。

はい、話を戻します。

病院選びの大事さを知る

私が経験してきたことで一番大事なことを今から書きます!

病院選びはネットの口コミだけでは見てはいけない。そして、ここじゃダメだと思ったらいち早く見切りをつけることが大事です。

実績数で病院が評価されても、この病院の成功例に入れなかった“あぶれた人”は誰が診てくれるのでしょう……。自分は大丈夫、きっと自分はすぐ妊娠できるって思っていても、やってみたらうまくいかない場合ってあるんですよね。見捨てないで、ちゃんと“あぶれた人”もケアしてくれる病院が一番いい。1つ目の病院はネットの口コミもよく、通いやすい立地で。ノーマルパターン(?)の不妊症患者はカバーできる医療技術がありました。ただ検査できる項目は少なく、また着床不全の専門医もいない状況でした。基本的なことはできるけど難しいパターンはできない。一通りやったからこそわかる結果だったけど、自分が難しい患者であることを早く受け入れて……そして見切りをつけて、難しい患者も対処できる病院にもっと早く移っていたら、お金やカラダの負担も少なかったのかもしれないと感じました。

結局、私が1つ目の病院にいたのは約2年で人工授精3回と体外受精5回をやり遂げました。反復着床不全かもしれないということまではわかったけど、その先の段階へは進めませんでした。

不妊治療界のドンみたいな病院に通い始める

2つ目の病院は、1つ目の病院の先生に紹介してもらった着床不全専門医のいる所に通い始めました。とても大きい設備の整った病院で、まぁ…治療費が高い(><)でもその病院の先生に言われたんです。

「8回目や10回目で妊娠する人だってたくさんいるよ。」
「まだ31歳でしょ。諦めるのは早いよ!」

お客様がいないと成り立たない商売ですからサービストークかもしれないですけど。(ええ)
すごく気持ちが救われました。というか、なんで5回がリミットなのかと聞かれ、あぁ自分で勝手に限界を作っていたんだと感じました。これは、1つ目の病院のせいですwww そういった意味では、助成金の方も回数制限を設けないで欲しいなと思いました。なんだか「これ以上は頑張っても無理です」と言われているみたいで。

治療費のこと

2つ目の病院は検査できる項目がたっくさん増えました。
ERA=着床の窓の検査(引用したHPの会社は関係ござません)とか、子宮にカメラを入れて病理組織検査も(まさかのポリープ見つかる)。

あと、治療としては子宮内膜スクラッチ、レーザー・アシステッド・ハッチング、ヒアルロン酸含有培養液、免疫抑制剤のタクロリムスと…できることは全部やりました! ちなみに、採卵前はペンタイプの注射器だったので心は保たれました(笑)顕微授精になっちゃったけど、結果的にこの顕微受精の卵が妊娠に至ります。一時期、ストレスで母体が排卵しなくなるというトラブルもありましたが、2つ目の病院に通い始めて9ヶ月、3回目でやっと妊娠できました。トータルでは8回目の体外受精です。もし、あの時諦めてたら……。

治療費は3年間の合計で350万円。2つ目の病院はちょっと治療費が高く(検査、採卵、移植など)一番重なった時で月の請求が90万円になることもありました。とにかくお金を貯めないと通えないので、毎月通うというのは難しくて、3ヶ月いけなかったりもしました。貯金もスッカラカン♪ スッカラカンだけど、子供が生まれてくるのでお金は必要です。いまは必至に節約。切り詰めて貯金しています。産休に入って労働者が一人減るしね!

不妊治療が保険適用になったらいいな〜。いや、そうならないと、20代とか、結婚式あげたばかりのカップルとか、家・マンション買ったばかりの夫婦とかはすぐに治療開始できないよ!! 政府ががんばれば「子供が欲しい夫婦」の力になれると思います。不妊治療をしているカップルは、もう特別ではないんですから。

これも公平に述べておきますが、私たち夫婦は都と区にも助成金を申請してお金をいただいています。これは本当に助かりました。それと、なんだか不妊治療がんばれって言われているようで、コソコソせず堂々と不妊治療の病院に通うことができました。

カラダの負担、心の負担、お金の負担

不妊治療をいつまでやるか?は、永遠の課題だと思います。短期間でもいいし、長期間やってもいいし、諦めてもいいし、諦めなくてもいい。子供がいない夫婦でも人生は楽しいし、実際私たちは結婚してから5年間子供ができなかったけど夫と2人で楽しかったです。 結婚しない方が幸せな人もいるし、離婚だってしてもいいと思う。選択は自由。夫婦間の自由! 個人の自由! ただ、もし子供が欲しいと強く願っている夫婦がいるならば、「カラダの負担」「心の負担」「お金の負担」、3つの負担のなかで他者が救える唯一のことが「お金の負担」だと思うんです。不妊症は病気…だと私個人は感じています。これは医療の問題でもあり、少子化問題でもある。

保健適応されない病気。
社会が理解してくれないとできない治療。

ここまで私の不妊治療生活3年間を書いたのは、最後まで読んでくださったあなたの周りに、もし不妊治療をしている方がいらっしゃったら、そっと支えになって欲しいと感じたからです。ナイーブな問題だから言いたくない人もいるだろうし、大声とか出さないで欲しいんですけど(笑)同僚のシフト変わってあげるとか、異性の部下が頻繁に治療に通うことを理解してあげるとか。治療のことで落ち込んでたらそっとデザートをあげるとか、そんなことでいい。所詮、個人の戦いであることには変わりないから、何も助けてあげることはできない。けれども、理解してもらえるだけで、治療は続けられる。


あと、できれば世の中の人に関心を持って欲しい。不妊治療費の負担をもっと軽くして欲しいです。できれば保険適用。今のところ、我が家には2人目を考える余裕はないけど、保険適用になったら考えるかもしれません。あ〜、保育園問題も解決していただけると助かります(笑)

こんなプライベートなことを長々と失礼しました。最後までお読みくださりありがとうございました。治療優先して諦めた仕事もあって悔しかったけど、文字にしたことで「頑張ったよ自分!」って思えるようになりました。

 


2022年4月より不妊治療の保険適用がほぼ決まったという報道を拝見して、追記します。(2021.9)

「やっと。やっとだ…」という思いです。私は、Twitterのニュースで見たのですが、アカウントのツイートにたくさんついたぶら下がりコメントを読んでいました。

「もっと早かったら・・・」
「安倍政権は8年間何やってたんだ」
というような保険適用化に前向きなコメントも見られましたが、中には

「税金あがらないといいな」
「できにくい人に産ませるより、できるひとにポンポン産ませた方がいい」
という意見もありました。後ろ向きな意見もありましたが、否定しません。税金払っているのは国民みんなだし、関係ないことにお金を支払わないといけないなんて嫌だな〜と思う気持ちもわからなくないです。

「貧乏な人に子供が生まれる→のちのち自立できない=そこまでして産ませる必要はない」
という意見も読みました。この一文からは、この人不妊治療のことを知らないんだなぁという印象を受けました。
不妊治療は、治療すればすぐ子供ができるという問題ではないです。まず検査があって、痛い思いをしてやっと受精に向けた治療へとつながります。時間もかかるし、プライベートや仕事する時間も奪われるし、覚悟がないとできないです。たぶんみなさん、親になるだ!育てるんだ!という相当な覚悟で挑んでいますよ。

 

保険適用と同時に、まずは不妊治療についても理解してもらえたらいいなと感じています。

Author: inamotokaori
お城マニア&観光ライター

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